酒に酔いたる騎士あらはる_(3)
「孤独になるには、旅に出るのがいちばんさ。」
スナフキンはそう言った。
僕はこの1年前、高校入学前の15歳の春も、房総を自転車で旅していた。
その時は友人と二人で、しかも宿泊まり旅だったから寂しくは無かった。
でも、もうその時から、人にペースを合わせる旅が窮屈に感じてたのだ。
旅に出ている時しか自由になる事なんてなかなか無いじゃない?
だから、この16歳の年から家族を持つまで、旅は常に独りでして来た。
まぁね、旅なんて云ったって、1週間もしたら戻ってこなくちゃいけないんだから、
随分と慌ただしい「孤独」よね。

今でも無人なこの駅は、建物は国の登録有形文化財になっているし、
小湊鐵道沿線は昭和の風景を残した都心から近いローカル線だから、
CMや写真集や、桜の季節の撮影者達やらで賑わう様になったね。
近くの廃校を利用したギャラリーが出来たりもしてる。
周辺一帯、ちょっと芸術的意識が高くなった感が感じられる?
勿論、16歳の僕が来た時は、小学校にまだ子供達は居たし、
今程知られていないローカル線だったな。

さて、4月の日没後の駅で、途方に暮れたまま時間が過ぎた。
列車は1時間に一本くらいだし、誰も駅になんてやって来ない。
周りはすっかりと闇になり、寒さは更につのってきた。
ライトすら持っていない僕は、闇の道を、あの川岸まで戻るのかと思うと絶望に似た気分だった。
今なら「何も恐れる事は無いよ。」と自分を励ませるかも知れない。
でも、4月としても寒さは異常なくらいだった。
このまま駅の待合で過ごしても、多分眠れはしなかったろう。
スマホも無い時代だ。 天気すら調べられないんだ。

結局、どう結論を出したのか、実は覚えていない。
呆然としたままの僕の目の前、もう誰も現れないと思っていた駅に、
そのカブが突然やって来たから!
時効だろうから云うが、カブにまたがったお爺さんは酒に酔っていた。
「あぁ....、絡まれたら嫌だな。」
身構えた少年(私)にお爺さんは近寄ってきた。
<まだ続く>
スナフキンはそう言った。
僕はこの1年前、高校入学前の15歳の春も、房総を自転車で旅していた。
その時は友人と二人で、しかも宿泊まり旅だったから寂しくは無かった。
でも、もうその時から、人にペースを合わせる旅が窮屈に感じてたのだ。
旅に出ている時しか自由になる事なんてなかなか無いじゃない?
だから、この16歳の年から家族を持つまで、旅は常に独りでして来た。
まぁね、旅なんて云ったって、1週間もしたら戻ってこなくちゃいけないんだから、
随分と慌ただしい「孤独」よね。

今でも無人なこの駅は、建物は国の登録有形文化財になっているし、
小湊鐵道沿線は昭和の風景を残した都心から近いローカル線だから、
CMや写真集や、桜の季節の撮影者達やらで賑わう様になったね。
近くの廃校を利用したギャラリーが出来たりもしてる。
周辺一帯、ちょっと芸術的意識が高くなった感が感じられる?
勿論、16歳の僕が来た時は、小学校にまだ子供達は居たし、
今程知られていないローカル線だったな。

さて、4月の日没後の駅で、途方に暮れたまま時間が過ぎた。
列車は1時間に一本くらいだし、誰も駅になんてやって来ない。
周りはすっかりと闇になり、寒さは更につのってきた。
ライトすら持っていない僕は、闇の道を、あの川岸まで戻るのかと思うと絶望に似た気分だった。
今なら「何も恐れる事は無いよ。」と自分を励ませるかも知れない。
でも、4月としても寒さは異常なくらいだった。
このまま駅の待合で過ごしても、多分眠れはしなかったろう。
スマホも無い時代だ。 天気すら調べられないんだ。

結局、どう結論を出したのか、実は覚えていない。
呆然としたままの僕の目の前、もう誰も現れないと思っていた駅に、
そのカブが突然やって来たから!
時効だろうから云うが、カブにまたがったお爺さんは酒に酔っていた。
「あぁ....、絡まれたら嫌だな。」
身構えた少年(私)にお爺さんは近寄ってきた。
<まだ続く>
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